新年は事業計画や予算だけでなく、会計体制を見直すのに適した時期です。米国で事業を展開する日系企業にとって、「安定した会計体制の構築」は経営管理の根幹を支える重要な要素です。しかし、米国特有の税務・労務制度や人材市場の状況により、社内だけで経理機能を維持することは想定以上にハードルが高くなる傾向があります。
本記事では、在米日系企業が直面しやすい会計周りの課題を整理した上で、外注(アウトソーシング)という選択肢がどのような役割を果たし得るのか を専門家の視点から解説します。
■ 在米日系企業で起こりやすい会計体制の課題
1. 経理人材の採用・定着の難しさ
米国では会計・経理職の人材需要が高く、特に日系企業が求める次のようなスキルセットを備える人材は非常に限られています。
- 日本本社とのレポーティングに慣れている
- 日本語・英語の両方で対応可能
- US GAAP や米国税務の基礎知識がある
そのため、採用時間が長期化したり、せっかく採用できても 定着せず離職が続く といったケースも少なくありません。
2.俗人化による業務リスク
少人数で運営されている在米法人に多く見られるのが、経理業務の属人化 です。
- 経理担当者が 1 名のみ
- 手順書が整備されていない
- 特定個人に業務が集中
こうした状況下で退職・休職が発生すると、ベンダーへの支払処理や給与の支払い、月次決算が止まるという経営上の深刻なリスクにつながります。
3. 米国税務コンプライアンスの複雑さ
米国の税務制度は州や地方自治体によって要求が大きく異なり、さらに次のような対応が求められます。
- Sales Tax の登録・申告
- Property Taxの申告
- Form 1099、W‑2、1042 などの各種年次報告
- Payroll Tax(州税・市税・雇用保険等)
- 四半期ごとの予定納税の支払い、法人税申告書に必要な資料の整理及び会計士との密なコミュニケーションなど
これらの業務を一人、または少人数の経理担当者だけで担うのは大きな負担となります。
■ 外注(アウトソーシング)という選択肢の有効性
こうした課題を背景に、会計・税務・給与業務を外部専門家へ委託する企業が増えています。外注は「人が足りないから仕方なく行うもの」ではなく、近年では 戦略的なリスク管理の手段 として認識されつつあります。
外注を検討する際に押さえておくべきポイントを整理します。
1. 業務継続性が確保できる
外注では複数名体制で業務が行われるため、担当者の退職や長期休暇による業務停止リスクを大幅に低減できます。特に支払い、月次決算、給与など、期限がある業務では外注の安定性が大きなメリットとなります。
2. 日米両方の基準に対応できる人材を確保できる
日系企業特有の要件として、日本本社の締めスケジュール、勘定科目体系、日本語での報告・コミュニケーションに加え、米国会計基準や税務知識も必要です。こうした “二つの言語と基準を理解するプロフェッショナル” を社内で採用・育成するのは負担が大きいため、外注が現実的な解決策となります。
3. コストを適切にコントロールできる
フルタイム社員を採用した場合の総コストには、給与以外にも保険、401(k)、有給休暇、採用コスト、トレーニングコストなどが含まれます。外注であれば、必要な業務量に応じてコストを調整でき、費用の削減につながります。
4. 税務コンプライアンスの強化
会計事務所を利用する場合、会計処理だけでなく、法人税申告、Sales Tax、1099/1042‑S などの各種申告まで一貫してサポートを受けられるため、税務申告における漏れや抜けが防止できます。
■ 外注できる主な業務例
全ての会計業務を外注することも可能ですが、必ずしもすべてを外部化する必要はありません。会社の経理体制やニーズに応じて、どの業務を外注するのが最適かをご検討いただければと思います。
下記が外注できる業務例になります。
■ まとめ:外注は在米企業の“選択肢の一つ”として検討すべき時代へ
在米日系企業が直面する会計・税務の課題は、人材採用や制度の複雑化により年々増しています。その中で、外注(アウトソーシング)は、
- コンプライアンスの強化
- 人材リスクの低減
- コストの最適化
- 日本本社との連携強化
といった効果を持つ、実務的で信頼性の高い選択肢 です。企業規模や業務量に応じて、「社内」「外注」「ハイブリッド」 の最適なバランスを検討することが重要です。
■ お問い合わせ
CDH では、在米日系企業の皆さまに向けて、会計・税務・給与・国際税務・駐在員関連など幅広いサービスを提供しています。
現地法人の会計体制にお悩みの際は、CDH会計事務所中尾 (tnakao@cdhcpa.com)までどうぞお気軽にご相談ください。




